ショウワな僕とレイワな私
大通りの横断歩道を通り抜けると、これまでのビル群の通りとは一転して木々が生い茂り水の流れる音の聞こえる広い公園に到着する。少し遠くに見える銀杏は黄金色に染まっている。日比谷見附の方向からまっすぐに進むと水の流れる穏やかな音が聞こえ、次第に2人の歩みもゆっくりとしたものになっていく。
「ほら、あそこに鴨がいるよ」
清士が眺める先の池では2羽の鴨が仲睦まじく水浴びをしている。ふたりは池を左手に第一花壇へ向かい、小道のベンチに腰を下ろした。
「なんだか久しぶりにたくさん歩いたしこんな公園に来るのも久しぶりだなあ、リフレッシュになるね」
「りふ……」
聞き慣れない言葉に表情が固まった清士を見て、咲桜はふふっと笑った。
「リフレッシュ、気分転換」
「初めからそう言ってくれよ」
緑の芝が広がる公園の片隅に朗らかな笑い声が響く。
「それにしても成田さん、日比谷公園なんてやっぱり寂しいよ。池とか草とか花だけ見て帰るつもり?せっかくなんだからどこか買い物とか行こうよ、やっぱり今からどこかの展望台とか景色が綺麗なところにでも行った方がいいと思うんだけど」
何かをしないと気が済まない咲桜に少し呆れたような様子の清士は小さくため息をつく。
「買い物なんかして一体どうするつもりなんだい、僕は何一つ持って帰らないぞ」
思わぬところを突かれた咲桜は「あっ、そうか」と苦笑いする。
「でもやっぱり何か動かなきゃ落ち着かないし、お金を使わなきゃなんだかこっちの気が引けるよ」
清士はスマートフォンで行き先を調べる咲桜の手を制するように軽く自分の手を添えて視線を上に移した。
「ごらんよ、この広くて青い空や青々とした芝や色とりどりの花を。それから目を閉じて水の音を聞いたり草の香りを感じたり、そよそよと流れる風を受けたりしてみると、良い気分にならないかい」
すうっと深呼吸をして目を開けた咲桜はすっきりとした気分で笑う。
「なんだか気持ちが軽くなって、楽しくなってきたかも」
咲桜の声を聴いて清士もゆっくりと目を開ける。
「何処かへ出かけて何かを買うということも立派な楽しみではあるが、こうして少しずつ時の流れるのを過ごすのも十分楽しいだろう。僕だってよく父さんや弟や友人とこの公園でのんびりと過ごしたものさ。咲桜さんは休むのが苦手な節があるから、時々はここで休んでみるといいよ」
清士の目線の先には果てしない大空が広がる。それからの2人は花壇の近くのガーデンレストランで昼食にして、休みながら公園のいろいろなところを巡り、もと来た道を辿るように銀座の中央通りに戻った。
「前にもこんなふうに並んで歩いたことあったよね、確か皇居の近くを歩いた日」
日の暮れも近くなり傾いたオレンジの光がビルの窓に反射する。
「あの日、通りすがりの人にカップルに間違えられたりしたっけ。あの時はまさかこんなことになるなんて全然思ってなかったけど……」
咲桜はヘラヘラと笑い声をこぼした。よほどの何かがない限り清士と付き合うなんてことはないと不機嫌になっていたはずだが、それから数ヶ月の間によほどの何かが起きたのか、付き合ってこそいないが両思いにはなっていた。
「あの日は確か僕がこの時代に来た翌日だった。今僕がここに咲桜さんといるのは咲桜さんのおかげだ。本当に助けてもらった……礼を言うよ」
笑っていたはずの咲桜の目には涙が浮かんでいるが、清士にその涙を見られないように店先のショーウィンドウを眺めている。
「湿っぽくしないでよ。寒くなってきたし、早く帰ろ」
「ほら、あそこに鴨がいるよ」
清士が眺める先の池では2羽の鴨が仲睦まじく水浴びをしている。ふたりは池を左手に第一花壇へ向かい、小道のベンチに腰を下ろした。
「なんだか久しぶりにたくさん歩いたしこんな公園に来るのも久しぶりだなあ、リフレッシュになるね」
「りふ……」
聞き慣れない言葉に表情が固まった清士を見て、咲桜はふふっと笑った。
「リフレッシュ、気分転換」
「初めからそう言ってくれよ」
緑の芝が広がる公園の片隅に朗らかな笑い声が響く。
「それにしても成田さん、日比谷公園なんてやっぱり寂しいよ。池とか草とか花だけ見て帰るつもり?せっかくなんだからどこか買い物とか行こうよ、やっぱり今からどこかの展望台とか景色が綺麗なところにでも行った方がいいと思うんだけど」
何かをしないと気が済まない咲桜に少し呆れたような様子の清士は小さくため息をつく。
「買い物なんかして一体どうするつもりなんだい、僕は何一つ持って帰らないぞ」
思わぬところを突かれた咲桜は「あっ、そうか」と苦笑いする。
「でもやっぱり何か動かなきゃ落ち着かないし、お金を使わなきゃなんだかこっちの気が引けるよ」
清士はスマートフォンで行き先を調べる咲桜の手を制するように軽く自分の手を添えて視線を上に移した。
「ごらんよ、この広くて青い空や青々とした芝や色とりどりの花を。それから目を閉じて水の音を聞いたり草の香りを感じたり、そよそよと流れる風を受けたりしてみると、良い気分にならないかい」
すうっと深呼吸をして目を開けた咲桜はすっきりとした気分で笑う。
「なんだか気持ちが軽くなって、楽しくなってきたかも」
咲桜の声を聴いて清士もゆっくりと目を開ける。
「何処かへ出かけて何かを買うということも立派な楽しみではあるが、こうして少しずつ時の流れるのを過ごすのも十分楽しいだろう。僕だってよく父さんや弟や友人とこの公園でのんびりと過ごしたものさ。咲桜さんは休むのが苦手な節があるから、時々はここで休んでみるといいよ」
清士の目線の先には果てしない大空が広がる。それからの2人は花壇の近くのガーデンレストランで昼食にして、休みながら公園のいろいろなところを巡り、もと来た道を辿るように銀座の中央通りに戻った。
「前にもこんなふうに並んで歩いたことあったよね、確か皇居の近くを歩いた日」
日の暮れも近くなり傾いたオレンジの光がビルの窓に反射する。
「あの日、通りすがりの人にカップルに間違えられたりしたっけ。あの時はまさかこんなことになるなんて全然思ってなかったけど……」
咲桜はヘラヘラと笑い声をこぼした。よほどの何かがない限り清士と付き合うなんてことはないと不機嫌になっていたはずだが、それから数ヶ月の間によほどの何かが起きたのか、付き合ってこそいないが両思いにはなっていた。
「あの日は確か僕がこの時代に来た翌日だった。今僕がここに咲桜さんといるのは咲桜さんのおかげだ。本当に助けてもらった……礼を言うよ」
笑っていたはずの咲桜の目には涙が浮かんでいるが、清士にその涙を見られないように店先のショーウィンドウを眺めている。
「湿っぽくしないでよ。寒くなってきたし、早く帰ろ」