ショウワな僕とレイワな私
「そういうわけで、僕は今年二十歳だが、第二学年といったところです。お嬢さんはお幾つで」
「おいくつって……私も20歳ですよ。それに私だって大学生です、成田さんほど高学歴じゃないし、いい大学でもないですけど」
女性は清士の学生証を見たときに、彼の通っている大学の名前を見ていた。学生証には「東京帝國大學」と書いてあって、つまりは今の東京大学ということになる。女性の通っている大学はほぼ無名だったが、彼女は尊敬する教授が勤めていることを知って今の大学に入学を決めた。清士は感心したような声で返した。
「女性でも大学に通うことができるようになったのですか。僕は、どの大学であれ、学びたいことを学ぶ環境に立つことができて素晴らしいと思いますよ。まだ僕の世界では、女性は『聴講生』として大学の講義を聴くことはできても、『大学生』にはなれない。だから、お嬢さんにはのびのびと、目一杯学んでもらいたい。ところで、お嬢さんは何を専攻していらっしゃるのですか」
「物理学です、あとは量子力学とか」
清士は妙な顔で女性を見た。
「物理学だと……お嬢さん、ま、まさか新型兵器の実験なんかをしているのでは……」
女性は一瞬、頭にクエスチョンマークが浮かんだ。物理学を学んでいても、さすがに武器を開発するようなことはない。ただ、大学の講義で物理学の歴史を学んだときに第二次世界大戦中の物理学者の多くは核兵器の開発のための研究をしていたという話を聞いたので、清士はおそらくそのことを言っているのではないかと女性は考えた。
「私はそんな武器の開発なんてしません。どちらかというとタイムトラベルとか、そういう現象を研究してるので」
「タイムトラベル……というと、先ほどお嬢さんの話した『時間旅行』のことですね……それで学生証を見て僕のことを信じてくれたというわけですか」
女性は足を止めた。
「まだ信じてませんよ、決定的な証拠がないので。あくまでも仮定です。ただ、服装とか話し方とかを見た感じでこの時代の人じゃない可能性もあるかと」
清士は少し信じてもらえたような気がした。
「僕はお嬢さんにとっては絶好の人物だな、時間旅行の研究にでも使ってやってください」
半分冗談で言った清士であったが、咲桜は断然そのつもりであった。
「もちろんそのつもりですよ。あと、ずっと思ってたんですけど、その『お嬢さん』っていう呼び方、どうにかなりませんか、不自然です」
女性は、「お嬢さん」という呼ばれ慣れない呼び方に違和感を持っていた。
「しかし僕はお嬢さんの名前を知らないじゃないか」
「あ、そうですね……これから1日は一緒に過ごすわけだし、名前くらい言っとかないとですね。私の名前は、大戸咲桜です……改めて、よろしく」
咲桜は清士に向かって手を出した。清士も咲桜の手を握る。
「よろしく、大戸さん」
「おいくつって……私も20歳ですよ。それに私だって大学生です、成田さんほど高学歴じゃないし、いい大学でもないですけど」
女性は清士の学生証を見たときに、彼の通っている大学の名前を見ていた。学生証には「東京帝國大學」と書いてあって、つまりは今の東京大学ということになる。女性の通っている大学はほぼ無名だったが、彼女は尊敬する教授が勤めていることを知って今の大学に入学を決めた。清士は感心したような声で返した。
「女性でも大学に通うことができるようになったのですか。僕は、どの大学であれ、学びたいことを学ぶ環境に立つことができて素晴らしいと思いますよ。まだ僕の世界では、女性は『聴講生』として大学の講義を聴くことはできても、『大学生』にはなれない。だから、お嬢さんにはのびのびと、目一杯学んでもらいたい。ところで、お嬢さんは何を専攻していらっしゃるのですか」
「物理学です、あとは量子力学とか」
清士は妙な顔で女性を見た。
「物理学だと……お嬢さん、ま、まさか新型兵器の実験なんかをしているのでは……」
女性は一瞬、頭にクエスチョンマークが浮かんだ。物理学を学んでいても、さすがに武器を開発するようなことはない。ただ、大学の講義で物理学の歴史を学んだときに第二次世界大戦中の物理学者の多くは核兵器の開発のための研究をしていたという話を聞いたので、清士はおそらくそのことを言っているのではないかと女性は考えた。
「私はそんな武器の開発なんてしません。どちらかというとタイムトラベルとか、そういう現象を研究してるので」
「タイムトラベル……というと、先ほどお嬢さんの話した『時間旅行』のことですね……それで学生証を見て僕のことを信じてくれたというわけですか」
女性は足を止めた。
「まだ信じてませんよ、決定的な証拠がないので。あくまでも仮定です。ただ、服装とか話し方とかを見た感じでこの時代の人じゃない可能性もあるかと」
清士は少し信じてもらえたような気がした。
「僕はお嬢さんにとっては絶好の人物だな、時間旅行の研究にでも使ってやってください」
半分冗談で言った清士であったが、咲桜は断然そのつもりであった。
「もちろんそのつもりですよ。あと、ずっと思ってたんですけど、その『お嬢さん』っていう呼び方、どうにかなりませんか、不自然です」
女性は、「お嬢さん」という呼ばれ慣れない呼び方に違和感を持っていた。
「しかし僕はお嬢さんの名前を知らないじゃないか」
「あ、そうですね……これから1日は一緒に過ごすわけだし、名前くらい言っとかないとですね。私の名前は、大戸咲桜です……改めて、よろしく」
咲桜は清士に向かって手を出した。清士も咲桜の手を握る。
「よろしく、大戸さん」