ショウワな僕とレイワな私
戻るとちょうど掃除も終えたところで、花も新しいものが活けてあった。白や黄色の美しい菊の花である。清貴はそれぞれに線香を分けた。
『父さん、やっと我が家の大きな役目を果たせました。伯父さんもきっと喜んでくれているはず』
『ようやく大戸さんに会うことができ、彼女も自分達も納得する形になったと思います。本当によかった』
『おじいちゃんから聞いた話は本当だったんだ……大戸さんは素敵な人だし、きっと清士さんも良い人だったんだと思う。奇跡みたいだなあ』
『成田さん、あなたが手紙を遺したことも知らなかったし、それのおかげでこんなことになるなんて思いもしなかったけど……こうやって令和でまた成田さんに関係することができて良かった。あっ、あの、大翔は裁判でかなりの罰金を食らったみたいで、あれ以来何の連絡もなく私も穏やかに過ごしてるから、心配しないでね。これからも成田さんと過ごした日々の思い出も、たくさんの手紙や日記も、時計もネックレスも、何もかも大事にする』
4人は思い思いのことを考えながら手を合わせ、菩提寺を後にした。
「きっと、清士さんも、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんも天国で喜んでくれてるだろうね」
先を歩いていた清浩が振り返って言った。清貴もそれに頷く。
「そうだな。私もそう思うよ」
「みなさん、本当にありがとうございました」
咲桜は歩きながら小さくお辞儀をした。
「いやいや、僕たちの方が感謝したいくらいですよ。僕たちもご先祖孝行できたし、大戸さんに出会えてよかった」
清浩の気持ちの良い笑い声でその場が和む。咲桜は、成田家の3人と菩提寺の入り口にあった桜の木の前で別れる。
「私はこれで失礼します、ありがとうございました」
「これからもお元気で」
清貴がニッコリと笑う。
「清貴さんも、お元気で過ごされてください」
咲桜も微笑み返す。
「これからも勉強頑張ってください、僕、応援してます」
清紀は輝かしい目線を咲桜に向けた。
「もちろん、ありがとうございます」
清浩がそろそろ行こうか、と言って3人と咲桜は別れた。桜の木の近くには、少しだけ春の香りが漂っている。咲桜は帰り道で飯田橋から有楽町へ向かい、少し歩いた。着いた先は美しい花々に彩られた日比谷公園である。
咲桜は第一庭園のベンチに座り深呼吸をした。清士と一緒に最後に出かけたこの公園は、冬の終わりと春の訪れを告げるように草木や花の彩が濃くなっている。空を見上げると澄んだ空にゆったりと流れる雲が見えて、少しぼーっとしていると、目の前に白い蝶が飛んできた。
「あっ、ちょうちょ!」
近くから聞こえたのは幼い男の子の声で、蝶を追いかけるように走る小さな少年を見た父が子供を追う。素敵な景色だなあ、と咲桜はほんわかとした気持ちになった。
『父さん、やっと我が家の大きな役目を果たせました。伯父さんもきっと喜んでくれているはず』
『ようやく大戸さんに会うことができ、彼女も自分達も納得する形になったと思います。本当によかった』
『おじいちゃんから聞いた話は本当だったんだ……大戸さんは素敵な人だし、きっと清士さんも良い人だったんだと思う。奇跡みたいだなあ』
『成田さん、あなたが手紙を遺したことも知らなかったし、それのおかげでこんなことになるなんて思いもしなかったけど……こうやって令和でまた成田さんに関係することができて良かった。あっ、あの、大翔は裁判でかなりの罰金を食らったみたいで、あれ以来何の連絡もなく私も穏やかに過ごしてるから、心配しないでね。これからも成田さんと過ごした日々の思い出も、たくさんの手紙や日記も、時計もネックレスも、何もかも大事にする』
4人は思い思いのことを考えながら手を合わせ、菩提寺を後にした。
「きっと、清士さんも、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんも天国で喜んでくれてるだろうね」
先を歩いていた清浩が振り返って言った。清貴もそれに頷く。
「そうだな。私もそう思うよ」
「みなさん、本当にありがとうございました」
咲桜は歩きながら小さくお辞儀をした。
「いやいや、僕たちの方が感謝したいくらいですよ。僕たちもご先祖孝行できたし、大戸さんに出会えてよかった」
清浩の気持ちの良い笑い声でその場が和む。咲桜は、成田家の3人と菩提寺の入り口にあった桜の木の前で別れる。
「私はこれで失礼します、ありがとうございました」
「これからもお元気で」
清貴がニッコリと笑う。
「清貴さんも、お元気で過ごされてください」
咲桜も微笑み返す。
「これからも勉強頑張ってください、僕、応援してます」
清紀は輝かしい目線を咲桜に向けた。
「もちろん、ありがとうございます」
清浩がそろそろ行こうか、と言って3人と咲桜は別れた。桜の木の近くには、少しだけ春の香りが漂っている。咲桜は帰り道で飯田橋から有楽町へ向かい、少し歩いた。着いた先は美しい花々に彩られた日比谷公園である。
咲桜は第一庭園のベンチに座り深呼吸をした。清士と一緒に最後に出かけたこの公園は、冬の終わりと春の訪れを告げるように草木や花の彩が濃くなっている。空を見上げると澄んだ空にゆったりと流れる雲が見えて、少しぼーっとしていると、目の前に白い蝶が飛んできた。
「あっ、ちょうちょ!」
近くから聞こえたのは幼い男の子の声で、蝶を追いかけるように走る小さな少年を見た父が子供を追う。素敵な景色だなあ、と咲桜はほんわかとした気持ちになった。