「affair」
「あ、結城先生!」
誰かのその言葉に、心臓が壊れそうな程跳ねた。
反射的に彼の方を見てしまいそうになるが、一拍おいて、ゆっくりとそちらに目を向けた。
結城京(ゆうききょう)
7年ぶりに見る彼は、昔よりもさらに色気を放っていて、
一瞬で心を奪われる。
いや、今もまだ私はこの人を好きだったんだな。
昔から、ずっとずっと。
「結城先生、相変わらず格好いいよね?」
京花にそう言われ、曖昧に頷く。
私が彼に惹かれているのは、昔も今も、京花には秘密。
「まあ、花純には高畑君っていう素敵な旦那様が居るもんね?」
「え、あ、うん」
ニッコリ、と自分では作ってると思う笑顔になった。
だけど、京花はその不自然さに気付かなかった。
「そう。私には今も昔も清太が一番」
今度は、完璧にそう言えた。
京花はニヤニヤと冷やかすように私を見ている。
清太も清太で、それなりにイケメン枠で、
清太が彼氏で羨ましいと、昔からよく言われた。
でも、私は昔からずっと清太を見ているからか。
清太を見て格好いいとか思う感情を抱く事はないのに。
それでも、目だけは肥えてしまったのか。
清太よりも格好いい人じゃないと、
格好いいとか思わなくて。
私の25年間の人生の中で、テレビの世界じゃなく、現実にそう思ったのは、
結城先生だけ。
「あれ、須和(すわ)と沢田?
そうか。沢田じゃなく、高畑か」
そう、柔らかく微笑む結城先生の言葉に、
胸がギュっと痛くなった。
多分、この人も私が高畑清太と結婚した事を知ってると思ってはいたけど。
実際、そうやって口に出されて、胸が痛んだ。
傷付いた理由はそれだけじゃない。
私よりも、先に京花に気付いたから。
須和って、私よりも先に呼んだ。
「結城先生、お久しぶりです」
結城先生は、私が高校三年の時の担任で。
数学を担当していた。