Ring
煌めくスポットライトに照らされ、大好きな人の歌を聴くことができるのは、ファンとして一番幸せな時間だろう。推しという存在は、日頃の疲れを吹き飛ばしてくれる大きな存在なのだ。

「バロンく〜ん!!」

黄色のペンライトを振り、ステージの上で歌う彼に向かって、家入凛(いえいりりん)は目を輝かせる。大音量で流れる音楽に凛一人の声はかき消されるはずなのだが、最前列にいるためか、ステージで歌っている彼は凛に向かって笑いかけてくる。すると、凛や凛の周りにいるファンたちが胸を高鳴らせるのだ。

会社員の凛は、歌い手バロンのライブに来ている。歌い手とは、歌ってみた動画を動画サイトに投稿する人のことだ。有名になると、こうして大きなドームで煌びやかな衣装を纏ってライブをする人もいる。

「みんな、今日はありがと〜!!」

アンコールを歌い終え、バロンが手を振って笑顔で挨拶をすると、楽しい夢のような時間が終わるのだと告げられたような気がして、寂しくなってしまう。だが、彼に会えた喜びの方が大きい。
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