Ring
「あれ、昨日のライブは黒色のワンピースだったよね?今日は俺の色なんだ。普通、逆じゃない?」

どこかで他のリスナーが見ているのでは、と警戒する凛を翔はジッと見つめる。話して、と言わんばかりに見つめられ、凛は口を開いた。

「ライブの時って、ほとんどの人がイメカラの服やアクセサリーを身につけるじゃないですか。そういうの、なんか嫌なんです。たくさんの黄色に囲まれたら、自分が霞んじゃう気がして。だから敢えて、違う色を着て行ったんです。少しでも気付いてほしくて」

「ええ〜、何その理由。めちゃくちゃ可愛いんだけど!」

砂糖菓子のように甘い空気を纏い、翔は頬を赤く染める。凛は恥ずかしくて死んでしまいそうだった。そんな中、行列はゆっくりと進んでいき、店員が話しかけてくる。

「二名様ですか?」

「はい、そうです」

凛が堪える前に、翔がニコニコと笑いながら答えていた。凛が否定する間もなく、二人は壁際の目立たない席に案内される。
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