【電子書籍化】虐げられたうさぎ令嬢は、獣人の国で寵愛される。
溺愛? お兄様が? 妹って、あ、ロジータのことよね……あの子はお人形さんのように可愛らしいもの。私って社交界には出ていないし、顔を知らなくて当然か。
「さすがウサギの花姫」
ウサギの花姫? 何そのあだ名は……ウサギのって呼ばれているってことはそれは私である。だが、なぜ花姫なのかわからない。
「これは知らなかったか? 王宮では有名だよ、魔法騎士団副団長は一番上の妹を溺愛していてとびきり可愛いと言いふらしておってなぁ……いつの間にか花姫だとか妖精だとかそんな名前がついている。それにウサギの獣人ということで大層可愛いんだろうと――ってどうしたんだ!?」
「……ぇ、いえ、あのっそんなふうになっているとは思わず……家、ぁお屋敷ではお兄様私のこと嫌っていらっしゃったので驚いてしまって」
そう、お兄様もロジータと一緒になって「気持ち悪い」と言ってきていた。しかもわざわざ離れにきて……なぜか、刺繍用の白の布と刺繍糸を買ってきてくれて
「そうか、だが其方が施したハンカチを常に持っておるぞ。大切にしている」
「ハンカチですか……」
それって、去年あげたものだろうか……お誕生日に刺繍糸をいただいたのでお兄様の誕生日にハンカチにして王都へ送った。