絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 小屋に辿り着き、逸る思いで簡素な木製扉に手をかける。
 ――ギィイイイ。
 立て付けが悪くなった扉は、引き開けると軋んだ音を上げた。
 腰を屈めて足を踏み入れた瞬間、俺は小屋内に人の気配を感じ、叫んでいた。
「誰だ!?」
 小さなくり貫き窓から差し込む月明りを頼りに小屋内を見回すが、侵入者の姿は確認できない。
 だが、確実に侵入者はいる――! 俺の五感が、侵入者の存在を確信していた。
「どこに隠れている!? 大人しく出てこい!」
 俺の上げた声に、小屋内の侵入者が緊張を走らせたのがわかった。神経を研ぎ澄ませ、相手の状況を探る。
 これは、素人の物取りか? ……あるいは、ただの迷い人や浮浪者か?
 侵入者は、不思議なくらい気配を殺すことに慣れていなかった。しかも、厳しい声で詰問する俺に対し、敵意めいたものがまったくと言っていいほど伝わってこない。感じるのは、ビクビクとした臆病な息差しのみ。
 ……あそこだな。
< 112 / 252 >

この作品をシェア

pagetop