絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 加えて、少女の鈴を転がしたような愛らしい声は、俺の胸を高鳴らせた。心地いいその声がもっと聞きたくて堪らなくなった。
「謝らなくていい」
 俺は上着を脱ぐと、一歩踏み出して少女の肩にパサリとかけてやった。
「え、これ……?」
 少女は驚いたようにパチパチと瞬きしながら肩にかかった上着を見つめ、やがておずおずと指を伸ばし、キュッと前を握り合わせた。
「そのまま羽織っておきなさい。それで、君はどこに滞在しているんだ? まだ成人を迎えていないのだろう? 親御さんはどうした?」
 少女は、我が国の成人である十六歳にはまだ届いていないようだった。おそらく、十四、五歳といったところだろう。そして少女の髪は手入れがよく行き届き、艶があって美しいが、このあたりでは見たことがない色だった。
 俺の屋敷は王都の中心部に位置し、各国大使館からも近い。おそらく少女は、我が国を訪問中の外国高官の家族に違いない。
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