絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 俺は二枚のブランケットと特大の疑問を抱え、物置小屋を後にした。すぐに小屋の周辺を探してみたが、少女の姿もルーナの姿も見当たらなかった。
 ふいに見上げた空は、いまだ分厚い雲が月を隠し、小屋の中と同様に暗かった。
 雲に隠れるように姿を消した月のような少女……。もしかすると俺は、月の幻影にでも惑わされていたのだろうか?
 ……そういえば、あの少女の髪と瞳はルーナにそっくりだったな。いや、髪や瞳だけではない。もしもルーナが人間だったら、あの少女のような雰囲気になりそうだ。
 まさか、あの少女がルーナだったなんてことは――。
「って、俺はいったいなにを馬鹿なこと考えているんだ? こんな夢物語を思い描いているのがユーグに知れれば、なにを言われるかわかったものではないぞ」
 自分自身が繰り広げたあまりに馬鹿げた妄想を自嘲気味に笑った。
 もしかすると俺は、ここ最近のワーグナー筆頭大臣の一件で少々疲れているのかもしれない。それにルーナとて、もし外が寒ければ自分で屋敷に戻ってこられるのだ。
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