絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
夜半過ぎ、間諜が新たに上げてきたワーグナー筆頭大臣の報告書を読み終えて、俺は奥のテラスへと足を向けた。
長窓を開け放つと、冷たい風が室内に吹き込んだ。この風に長くあたっていたら体の芯から冷え切ってしまいそうだが、書類仕事で凝り固まった頭と疲れた目には心地よかった。
俺はそのままテラスに踏み出していき、手擦りにもたれかかって空を見仰いだ。煌々と月が輝いて、今夜はとても明るかった。
だが、目線を少し遠くに向けると、北の空にぶ厚い雲のかたまりが浮かんでいるのが確認できた。もし、あれらが風で流れてきたら、明るい夜空は一転、暗がりに変わるだろう。
……そう、あの晩がまさにそうだった。今日とよく似た空模様と気候のあの日、俺は月の化身みたいな麗しい少女を見つけた――。
各国大使館に問い合わせても、警邏が行った周辺の聞き取りでも、少女の情報はなにひとつ掴めないまま捜査は打ち切られた。口には出さずとも、皆が内心で俺の目撃情報そのものを懐疑的に思っているのも知っている。
長窓を開け放つと、冷たい風が室内に吹き込んだ。この風に長くあたっていたら体の芯から冷え切ってしまいそうだが、書類仕事で凝り固まった頭と疲れた目には心地よかった。
俺はそのままテラスに踏み出していき、手擦りにもたれかかって空を見仰いだ。煌々と月が輝いて、今夜はとても明るかった。
だが、目線を少し遠くに向けると、北の空にぶ厚い雲のかたまりが浮かんでいるのが確認できた。もし、あれらが風で流れてきたら、明るい夜空は一転、暗がりに変わるだろう。
……そう、あの晩がまさにそうだった。今日とよく似た空模様と気候のあの日、俺は月の化身みたいな麗しい少女を見つけた――。
各国大使館に問い合わせても、警邏が行った周辺の聞き取りでも、少女の情報はなにひとつ掴めないまま捜査は打ち切られた。口には出さずとも、皆が内心で俺の目撃情報そのものを懐疑的に思っているのも知っている。