絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 わたしは抜き足差し足で忍び寄り、ジーッとチャンスを窺った。
「あの~、こっちの袋にまだ結構余裕がありますけど~?」
「いや。先に詰めたこっちと合わせて、もう指定の数が入ってるッス。その袋は、そのまま閉じてしまって大丈夫ッス」
 ずんぐりむっくりした料理人……うーんと、長いから彼のことはずんぐりでいっか。そのずんぐりがのんびりとした声で問うと、スラリとした料理人がテキパキとした指示を返す。
「わかりました~」
 わたしは、ずんぐりが纏めている袋に狙いを定めた。
「よし、こっちのふたつは完成ッス。それじゃあ、先に運び始めるッスね」
「はい~」
 スラリとした料理人はふたつの袋を手にスックと立ち上がり、ひと足先に厨房を出ていった。
 ずんぐりがひとりになった瞬間、わたしは即座に脇のスパイスラックから目当てのブツ(コショー)を掴み取ると、キュッと口を閉じ、呼吸も止めて、彼に向かっていざ渾身のひと振り。
 ――パッ! もひとつおまけで、パッ!
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