絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
「どうか、レリウスさまたちが突入する前に合流できますように――!」
 祈る思いで、わたしは裸足のまま駆けだした。落ち葉や枯れ枝が素足の肌を容赦なく傷つけるけれど、その痛みすら今はまったく感じなかった。
 走りながら、わたしは常に後ろにも注意を向けていた。そうして何度目かに振り返った時、木々の間から立ち昇る煙を確認した。
 ……コリンの放った狼煙筒だ!
 グレス書記官の言葉通り、発煙が始まるタイミングの他、発煙時間や威力までかなり巧妙に作られているらしく、煙はいくらもせずスゥッと消えていった。
 意識して森の方を観察していなければ、この煙に気づくことは難しい。おそらく、ワーグナー筆頭大臣邸への突入に集中するレリウスさまたちも、これには気づかないだろう。
「……レリウスさま、すぐに行くから待っていて!」
 わたしは限界まで走りのペースをあげた。
 現実的に考えたら、馬で先を行くレリウスさまたちにわたしが追いつける可能性など、万にひとつもないだろう。それでも、一縷の望みを懸け、走らずにはいられなかった。

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