絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 少女の手から、交戦中に満月から降り注いだのと同じ光が舞い上がり、俺の手を包み込む。
 この光は……!?
 やわらかな発光はしばらく続き、やがてキラキラとまばゆい光の残像を残して消えていく。そうして光が消えた後、俺の手と袖にこびり付いていた土と血がすっかり綺麗になり、手の甲に朱色の傷がひと筋走るだけになっていた。
 これは、現実か……?
 奇跡を目の当たりにして、俺は言葉を失くして立ち尽くした。
 もしかして、この少女は天使なのか? ……いや。神秘的な佇まいとこの力……天女かもしれんな。
「あぁ、よかった! 出血こそ多かったけれど、傷自体はそんなに深くなさそうだわ」
 少女は俺の手を握ったまま、安堵の表情を浮かべた。
 固まっていた俺は、少女の声にハッとして、慌てて周囲を見回した。隊員らは副リーダーの指示の元、剣の回収やワーグナー筆頭大臣を連行する準備にあたっており、幸い俺以外に少女の起こした奇跡を見た者はいないようだった。
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