絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 理性と本能がせめぎ合い、俺の心は揺れていた。
「……そういえば、前回聞きそびれたままだったな。君の名前を教えてくれないか?」
 俺は一旦、核心部分を脇に置くと、ずっと気になっていたことを尋ねた。
「ん? どうした?」
 前回同様、この質問に少女は困った様子で眉をハの字にし、なかなか答えようとしない。
 ……まさか、天女には名前がないのだろうか?
 俺がそんなことを思っていたら、視界の端で東の空が薄っすらと白らみはじめるのに気づく。空の主役が、満月から太陽に変わろうとしていた。
 ……間もなく夜明けか。いつまでもこうしてはおれんな。
 しかたない。今は一旦、ワーグナー筆頭大臣邸に戻るか。
「よし、続きは歩きながら話そう」
 徐々に顔を出す朝日をひと睨みし、少女に告げた。
 ……ん? その時、高くなってきた太陽に照らされて、腕の中の少女が再び淡い光を帯び始めるのに気づく。
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