絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 随行する部隊員たちでこそ、日頃から俺と行動を共にし今さら俺の図体や眼光にビクつくこともないが、俺は二メートルを超す身長に無駄なく鍛え上げられた筋骨隆々の体躯。加えて、元来の悪党顔だ。そのせいで、俺がふらりと往来を闊歩しようものなら、必ずと言っていいほど子供に泣かれ、女たちは逃げ出し、老人は腰を抜かす。これが冗談でもなんでもない、俺の日常なのだ。
「ま、とりあえずグレス書記官には私が後でうまいこと取り成しておきますよ。けどこれ、貸し一個ですから。いいですね?」
 さらにこの場に不釣り合いなほど爽やかな笑顔でこんなふうに告げられて、俺は言葉少なにうなずくのが精一杯だった。
 副官のユーグには、女房役として日頃から言葉で言い尽くせぬほど世話になっている。これは動かしようのない事実だが、同様に我が副官は時に〝魔窟の森〟の迷信なんぞよりよほどに恐ろしい……。これもまた、俺にとって紛れもない事実である。

 どことなく重苦しい空気のまま、俺たち一行はついに〝魔窟の森〟に足を踏み入れた。
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