絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 そんな注力の甲斐もあり、ここ数年カインザー王国は大きな戦もなく安寧の世を謳歌している。
 戦に明け暮れている時分、俺は誰よりも強く、誰よりも的確に騎士団を指揮し、向かうところ敵なしだった。……しかし、平時にあって俺は未熟だ。
「はぁ」
 意図せず、特大のため息が漏れた。
「……ぶつぶつ。……ぶつぶつ」
 相変わらず、うしろではまともな意味をなさない念仏のような低い声が途切れることなく響いていた。

 各々の思いを余所に、森の横断は特段の問題もなく、拍子抜けするくらい順調だった。そうして四時間ほどをかけて進み、間もなく森を抜けようかというところ――。
 ――カサッ。カサカサ。
 近くの葉が不自然な揺れ方をし、うしろでグレス書記官の「ヒィッ!!」という悲鳴があがる。
 俺が慌てて音のした方へ視線を向けると、三匹ほどのヤマネコが駆けていくのが見えた。ちなみに、ヤマネコというのは我が国における最古の品種のネコで、現在ではこの森の他、数か所の山や林に僅かに生息が確認されるだけの希少なネコだ。
< 29 / 252 >

この作品をシェア

pagetop