絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 ……ほぅ、珍しいな。
 ヤマネコたちが住処にしているのは森の奥だ。彼らがこんな森の外れに姿を現すことは稀だった。
「い、今のは魔物では!? 魔物が現れたのではないのですか!?」
 グレス書記官がガクガクと体を震わせながら問う。
「グレス書記官、安心してくれ。今のはヤマネコだ」
「ヤマネコ……? そ、そうですか」
 それにしても、ヤマネコたちはなぜ、こんなところにいたのだ?
「ユーグ、すまんが先に進んでいてくれ。すぐに追いつく」
「ちょっ!? レリウス様――」
 どうにも気になって、俺はユーグに言い置いて愛馬を降りると、近くの木の幹に手早く手綱を結び付けて駆け出した。
 木々を分け入ってヤマネコたちが走ってきた方向に行くと……、なんだ?
 土で汚れたボロ切れのようなものが転がっていた。
 あれは、毛玉……いや、仔ネコか!? それが仔ネコだと認識するのに僅かな間を要したのは、ボロ切れのように打ち捨てられたそれが生き物だとは到底思えなかったからだ。それくらい、仔ネコはひどい状態にあった。
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