絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
魂だけの存在になったわたしは、ふわふわと自宅の上空を漂っていた。
だけど、残る時間はもう僅か。天からの引き寄せが、かなり強くなっていた。
『……パパはもう二度とステーキが食べられる気がしないよ。これはルル、お前がお食べ』
『あなた……っ』
自分の遺影が掛けられた仏壇の前で涙に噎ぶパパとママ、『やったー♪』とばかりに尻尾を振ってステーキに噛り付くルルを眼下に眺めながら、わたしはついに吸い寄せられるように天高くへと飛び立っていった。
《ふみゃ~(お肉うまうまうま。やわらか、とろとろ。おいしくって、ほっぺたが落っこちちゃう~)》
魂だけの存在になったせいか、なぜかステーキを頬張るルルの暢気な声が、明確な意味を持って聞こえていた。
……神様のバッカヤロー(怒)! もう過労死なんて絶対に御免だ。来世はわたしも、お気楽なネコになりたーいっ!
わたしはパパとママにありったけの感謝と別れ、そして先立つ親不孝を詫びた後、こんなふうに声にならない声で悪態を叫んだ。
その瞬間、ステーキにがっついていたルルがこちらを見上げ、フッと微笑む。
え? 今、ルルと目が合った……?
そんなふうに思ったのが最後。わたしの魂は、真っ白な光の中に吸い込まれて消えた――。