絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 レリウスさまの前から脱兎のごとく逃げ出したわたしは、一階の廊下の窓から外に出て、いつもの木陰に飛び込んだ。直後、「ぽぽん!」という音とともに、わたしはもふもふのヤマネコから少女へと姿を変えた。
 白銀の長い髪がサラリと肌をなでる。
 大地を踏みしめるのは、スラリとした二本の足。パサッと口から落ちたブランケットは、同じくスラリとした二本の両腕で受け止めた。
 視界が、ネコの姿の時とは段違いに高くなっていた。
「……なんとか間に合った」
 わたしはストンッとしゃがみ込み、すっぽんぽんの体を隠すようにブランケットを胸もとまで引き寄せた。
 人間の姿での野宿は慣れっこ。……というよりも、雨降りなんかを除くほとんどの夜をわたしはこの姿で過ごしているのだ。だから土の上で風に晒されて夜を明かしたからといって、今さら風邪を引くこともない。
 ……でも、どうしてだろう。
 今、ひとりで明かす夜がこんなにも心細い。レリウスさまの温かな腕の中であのまま朝を迎えられたら、それはどんなにか幸せなことだろう。
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