一途な部長は鈍感部下を溺愛中
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本当に、激動の一日だった。
家に戻ってから更に冷静になって、顔から火が出るかと思った。思い返せば返すほど、とんでもないことをしてしまった、と恥ずかしくなる。
部長の前で泣いてしまったことも、噛み付いてしまったことも、今すぐ彼の記憶を無くしてしまいたいくらいに恥ずかしかった。
でも、何よりも恥ずかしいのは……。
あの日、何度も触れ合い、溶け合った体温と、いつまでも頭に残る、こちらを甘やかすような眼差しと声だった。
「……つまり、手を出されたってこと?」
顔を赤くして、つっかえながらもどうにか話終えると、暫く黙っていたゆかりは剣呑な表情でこちらを見た。
私はゆかりの言葉に、「えっ!?」と素っ頓狂な声を出してしまう。
「だ、出されてないよ!?」
「あ、そう。ただの惚気にしか聞こえなかったから」
しれっとした顔で紅茶を飲むゆかり。
今日は緊急招集と称して急遽ゆかりに来てもらったのだ。一人で抱えるには、あまりにも色々な事が起きすぎたから。
カップをソーサーに置くと、ゆかりは頬杖をついて微笑んだ。
「でも良かったね。初彼氏じゃんおめでとう」