一途な部長は鈍感部下を溺愛中



「……あの、」

「好きだよ」


それは唐突な愛の告白だった。

まるで弓矢で心臓を射抜かれたように、呼吸が止まる。


間抜けな顔を晒しているであろう私に部長は小さく笑い、指の隙間から零れた前髪の奥で目を伏せ「……いや」と呟いた。


「これだけじゃ、駄目なんだよな」


そして、膝の上に手を下ろし拳を丸めると、部長がピンと背筋を伸ばす。それに釣られるように、私も姿勢を正した。


「佐藤瑞稀さん」

「は、はい」


じ、と透き通るような瞳が緊張に固まる私を映す。


「好きです。結婚を前提に付き合ってください」


はい、と。よろしくお願いします、と。そう言うつもりだった。

今までの流れで、きっと私が望んでた言葉を言ってくれるつもりなんだろうなと、分かったから。


でも、望んでた以上の言葉が飛び出てきたせいで、すぐに声が出なかった。


「けっ……!?」


一瞬の沈黙を挟んで出たのはつっかえたような声で、そんな私に部長は愉しそうに笑った。


「なんだ、君はそこまでの覚悟は無かったか?」


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