一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「えっ」
「俺は、ただの恋人で終わらせるつもりは無い」
握った拳を緩めると、卓上で手を組み、その上に顎を乗せる。そして、どこか挑発的な、それでいて蠱惑的な視線をこちらに流した。
「どうする? 一度捕まえたら、もう絶対に離さないぞ。君にその覚悟があるか?」
ごくり。
無意識のうちに唾を飲み込み、試すような微笑を湛えている部長をじっと見つめ返す。
そんな未来のことまで見据えていたと、望んでいたと言ったら嘘になる。だって、付き合うことすら夢物語だと、そう思っていたのだから。
……でも、もし、許されるなら。望んでも、良いのなら。
「よ……」
「よ?」
「よろしく、お願いします……!」
離さないでください、とは、羞恥心が勝って言えなかった。覚悟は出来てます、とも。
でも、目の前にぶら下がったチャンスを、差し伸べられた手を、掴まないという選択肢は無かった。
緊張から声のボリュームが制御出来ず大きくなってしまった私に、部長は目を丸くした後で花が綻ぶように破顔した。
「ふふ、そこは、私も離しません! くらい言ってくれても良かったんだぞ?」