一途な部長は鈍感部下を溺愛中
それから暫くして、席を立っている間にお会計を済ませてくれ、私たちはお店を出ることになった。
自然とつま先は駅の方角を向き、揃って足を踏み出そうとした時。
「ッ!?」
無防備に放り出されていた手に、自分のそれよりも幾らか温かい指先が絡み、肩が勢いよく跳ねる。
何の躊躇いも予兆もなく恋人繋ぎをかましてきた張本人は、私の反応ににんまりと目を細めた。
「恋人なんだ、いいだろう?」
「う……」
確かに、恋人なら普通なのかもしれない。手を繋ぐくらい、今どき小学生カップルでもやってるだろうけど。
「し、心臓に悪いので、もっとスローペースで……」
この勢いのままこられたら、心臓発作で突然死するかもしれない。
割りと本気でそう思ったし、心からのお願いだったのだが、部長は口をへの字に曲げ、私の手を更に握りこんできた。
「これくらいは許せ。これ以上譲歩できるか」
あんまりワガママ言うならこうするぞ? と、繋いだ手を引っ張られる。
たたらを踏みながら寄せられるがままに一歩踏み出すと、繋いだ手が部長の口元へと引き寄せられていった。