一途な部長は鈍感部下を溺愛中
およそはにかみ顔で言うようなセリフではない言葉が出てきてぐりんと部長へ顔を向けてしまう。
そんな私の視線を気にせず、へへ、と部長は可愛らしく笑った。
「君とどうしてもお近付きになりたくてな。まあ、職権乱用って奴だ」
「そ、そうだったんですか……」
爽やかな笑顔で放たれたそれに、どう答えればいいか分からずやや引き攣った笑みで応える。
でも……つまり、私が人事部に配属された日には、もう……?
そこまで思い至った瞬間、ドクンと心臓が大きく脈打ち、身体中が熱くなる。急に落ち着きを無くした私に、部長はキョトリと小首を傾げた。
「どうした?」
「い、いやあの……その、まさかそんな前から……知っていてくれてたとは、思わなくて、ですね……」
だってそんな素振り、少しもなかった。……いや、私が気付いてなかっただけで、多少はあったのだろうか。
ショート寸前の思考回路を必死に動かしながら、色々と衝撃の事実を少しずつ砕いて飲み込んでいると、頭上から柔らかな笑い声が降ってくる。
見上げた先、陽だまりのように優しく暖かい視線が私を包んだ。
「君が想う何倍も、俺は君に溺れてるんだ。……知らなかったろ?」