一途な部長は鈍感部下を溺愛中
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東雲部長と想いを通わせて、無事、恋人という関係になれて一ヶ月と少し。
関係は多分……良好、だと思う。
だけど、困った……というか、未だに慣れないことが、一つだけ。
「さっちゃん、駅前に出来た和食屋さん知ってる?千円均一の」
お昼休みのチャイムが鳴ったと同時、横山くんが席を立ち上がり、こちらに話しかけてくる。
パソコンにスクリーンロックをかけながら、私は顔を上げて首を横に傾けた。
「駅前? 知らないかも……」
「ほんと! これから井上さんと行くんだけどさっちゃんもどう?」
ニコニコと誘ってくれた横山くんの横で、井上さんも微笑みながら頷いてくれている。
私にまで声を掛けてくれるなんて、嬉しいお誘いだ。でも……。
「こら、人の恋人を勝手に誘うな」
今日は先約があって。そう口にする前に、拗ねたような声が後ろから覆いかぶさり、頭の上にずしりと重みが乗った。
ピキリと固まる私と、呆れ顔になり私の頭上あたりに視線を送る横山くん。背後から白くしなやかな、でも男らしく骨ばった両手が回され、私の胸の前で指を組んだ。
「……部長、さっちゃん固まってますよ」