一途な部長は鈍感部下を溺愛中



私の頭頂部に顎先を乗せるように凭れてきた部長が、甘えるように更に体重を掛けてくる。


それに応えることも拒むことも出来ず、ただただひたすら耐えていると、部長は痺れを切らしたように私に話しかけてきた。


「だって今日は俺との約束があるもんな?」

「は、はい」


部長の体重を感じたまま、軽く数度頷いてみせる。横山くんは、どこか苦い顔をしていた。


「今日は、じゃなくて、今日も、の間違いでしょ」


バッサリと言ってのけた横山くんに、その通り! と叫び出したい気持ちをグッと堪える。何も言わない私たちに、横山くんは続けた。


「部長、人目も憚らずさっちゃんに構い倒すから、すごい噂になってるの分かってる?」


そう。そうなのだ。

無事に想いを確かめあってからというものの、会社内外問わず部長からのスキンシップが増えた。それはもう、私の心臓を止める勢いで増えたのだ。


それがここ最近で一番の悩みだったりする。

人事部の部屋の中だけなら兎も角、廊下でもお構い無しなので、横山くんの言う通りかなり噂になっていることは知ってた。だって、今まで数々の女性の誘いを断わり、社内一モテるのに浮いた噂のひとつも無かった人だ。


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