一途な部長は鈍感部下を溺愛中
そんな彼が、人が変わったように知らない女と手を繋いだり顔を寄せあっていたりしたら、一体何が起きているのかと皆不思議に思うだろう。でも私だって何が起きてるのかよく分かってない。
ただ私は、甘え返すことも、拒むことも出来ず、身体を強ばらせる他無かった。
「いいだろ。昼休憩か、仕事終わりだけに留めてるんだから」
そう言い切った部長に、横山くんは肩を竦める。
「やめてくださいよ。部長が仕事中までデレデレしてる所なんて見たくないし……」
首を振った横山くんは私に困り笑顔を浮かべると、「ま、先約なら仕方ないか」と言った。
「部長とのお昼に飽きたらいつでも言ってね、さっちゃん」
「う、うん。ごめんね、誘ってくれてありがとう」
井上さんにもぺこりと頭を下げると、微笑んで返してくれた。そのまま部屋を出ていく二人を見送っていると、ふ、と頭の上から重みが退く。
顔を上げると、部長が微笑んでこちらを見ていた。
「さ、俺達も行くか」
その言葉に、私はこくりと頷くのだった。