一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「しかし、アイツも失礼だよなあ。俺に君が飽きたら……なんて」
なあ? と真っ直ぐ見つめられ、私は曖昧に笑って見せる。
ここは主に人事部が利用している資料室。他部署の人が来ることも無く、それはお昼となれば尚更だ。付き合い始めてから、私たちはいつもここでお昼を取っていた。
私も部長も、それぞれ自炊したお弁当を持ち寄りだ。買いに行く時間が勿体ないから、と、二人でご飯を食べるようになってからお弁当を作るようになった部長に倣い、私も日々修行中。
部長の手作り弁当なんて見たことがなかったから、初めは意外そうな顔をしてしまった私に、一人暮らしが長いからなと部長はお茶目に笑っていた。
彩り豊かな部長のそれと比べて、やや茶色寄りの自分のお弁当に目を落としながら、私はポツリと呟く。
「……でも、無理はしないでくださいね」
「無理?」
「お昼、私にばっかり時間使ってくれるから……」
前までは、お昼を食べ終わったらすぐに、なんなら食べながらキーボードを叩いていた部長だ。
お昼くらいゆっくり休んで欲しいけれど、私との時間を作ってくれようとするあまり仕事の邪魔になってしまっているなら申し訳ない。
それに、未だに二人きりの時間に慣れなくて、面白い話のひとつも出来ないし……。