一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「俺が君と居たくて誘ってるんだ」
凛と真っ直ぐな声にハッとする。
顔を上げると、口元を覆うように頬杖をついた部長がどこか拗ねたように視線を背けていた。
そして、ちらりと瞳だけがこちらに向けられる。
「まあ、君が落ち着かなくて疲れると言うなら、頻度は考えるが」
とんでもない、と首も手も横に振る。
確かに、緊張はする。これまで、時間が合えば会社終わりにご飯に行ったり、休みの日に何度か出かけたりしたことはあるけど、未だに心臓の高鳴りは止まることを知らなかったから。
でも、嫌なわけじゃない。
「私、まだ慣れてなくて……ごめんなさい」
緊張も、動揺もするけど、嬉しいのだ。でもそれを、素直に伝える勇気も言葉も、私には無くて。
隣合って座っていた部長が、いつの間にか肘を下ろし、ひと一人分空いていた距離を詰めてきた。
トン、と肩が触れ、じわりと熱が生まれる。
部長が手元に視線を落としたままの私をじっと覗き込んでくるのが分かった。そして、髪を梳くように後頭部を撫で始める。
「慣れてないとか、気にしなくていい。そこも可愛いし、それに慣れてたら……それはそれで、困る」