一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「佐藤も、もし今まで仕事してて、ここの支社とやり取りする中で困ったことがあれば言うといい。折角の機会だからな」
頷いたが、別に不満もないので特に言うことも無い。
とにかく今日は、大事なことを聞き漏らさないようなるべく部長の側にいてメモを取ろう。そう決意しながら、午前中を過ごした。
実際に仕事をしている様子を後ろから見たり、ファイリングされた資料を見せてもらったり……そうしている内にあっという間に時間は過ぎ、お昼休みとなった。
チャイムの音を合図に、資料室を訪れていた私と部長は部屋を出て、荷物の置いてあるデスクルームへと向かう。
お昼、どうしようかな。
あそこのミーティングテーブル、そのまま使ってもいいかな……。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと隣から視線を感じて見上げる。すると、こちらを見つめる琥珀色と目が合った。
「……なあ、」
そして、東雲部長が何かを言おうと薄い唇を開いた時。
「東雲部長」
後ろから部長を呼ぶ声が聞こえてきて、私と部長は揃って振り向いた。
そこに立っていたのは、めちゃくちゃスタイルのいい、赤いルージュが印象的な女性。