一途な部長は鈍感部下を溺愛中
キリッとした眉とパッチリとした大きな瞳にくっきり目のアイライン。
濡れ羽色の髪をかきあげてハイヒールで歩くその姿が、ドラマに出てくるようなバリバリのキャリアウーマンさながらで、カッコイイ……と思わず惚けてしまった。
部長の知り合い……?と思って隣をちらりと見上げるとストンと感情を削ぎ落としたような真顔で、怖くなり直ぐに目を逸らす。
しかしその人はそんな視線もものともせず、妖艶な笑みを湛えたまま私たちの前に立った。
「私、経理部の黒木と申します。これからお昼ですよね?近くに美味しいお店を知っているので、良ければご一緒にどうですか?」
そう微笑んだ黒木さんの視線が、ちらりと私に一瞬流れる。その視線は完全に邪魔者に対するそれで、ハッとして私はその場から去ろうとした。
二人で食事をしたいから気を利かせて退散しろ。とその眼力が言っていたので。
「あ、あの部長、私はお先に……」
へら、と誤魔化すように笑いながらジリジリと後退すれば、その瞬間目にも止まらぬ速さで東雲部長の腕が伸び、私の手首を掴んだ。
ひえ、と喉が鳴る。
ちょっと動かしてみたが、ますます掴む力を込められてしまった。