一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「正しくは、君だけの華、だな」
だろ? と首を傾げられ、濁りのない澄んだ瞳に覗き込まれる。
びっくりするくらいキザなのに、似合ってしまうのが悔しい。
うぐぐ、と唇を噛んで唸っていると「それより」と不満そうな声が降ってきて、雲行きの怪しさにぴゃっと肩が跳ねた。
「一緒に歩いてたんだから、君が妻だということも分かって然るべきだと思わないか?」
「いやあ、部長の方が遥かに知名度が高いですから……」
私なんてそんなそんな。謙遜しながら後ろに下がろうとすると、ブラウスの襟元に指が差し込まれ引っ掛かる。
わあ、セクハラだ! 心の中で叫びながら、慌てて胸元を押さえたものの、意に介さず聖さんの指先は、服の下でひっそりとその存在を主張していたチェーンを巻き付けた。
そのままするりと抜き出され、まだ傷一つないピカピカの指輪が胸元に放り出される。
「君が俺のものだという証を、隠してるからだろ」
不満です、と隠しもしない表情だった。
どうやらこの旦那様は、折角の結婚指輪を私がネックレスにしていることがとっても気に入らないらしく、毎日、親の仇でも見るかのような視線を首元に注がれていた。