一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「だって、失くしたり傷つけたりしたらと思うと怖くて……」
「指に着けてる方が失くさないだろ」
ぴしゃりとやっつけられ、何も言えなくなる。
他に理由があるんだろ? と責めるような視線からそっと目を逸らした。
だって……恥ずかしいんだもの。
婚約指輪よりも凝ったデザインで、ひと目でお揃いだって分かってしまうし、女の子たちに噂されるのは分かりきっているから。
もう少しほとぼりが冷めればなあ。そう考えているとチェーンを軽く引かれ、意識を戻される。
じ、と強い眼差しに射抜かれ、たらりと背中を冷や汗が伝った。
「このまま彼女たちの元に戻って、君を紹介してやろうか」
「ひぇ……ご、ご勘弁を」
目が笑ってない。いや口も笑ってなかった。
もしかしなくても、私が考えてるよりご立腹なの……?
「あの……つ、着けます! ちゃんと、指に!」
「ぜひそうして欲しいところだな」
「あのあの、なのでもう……」
いつの間にか頬に両手を添えられている。
聖さんの両手首を掴んでどうにか離れようとするも、力が強すぎてビクともしなかった。