一途な部長は鈍感部下を溺愛中
Sweet Time
番外編2 Sweet Time
───────────────
右手の薬指に約束の輪が嵌められてから、半年が経った。
そして……。
「おはよ、瑞稀」
目が覚めると、視界いっぱいに愛しい人の綺麗な顔が広がるようになってから、およそ一ヶ月……。
「……」
「……」
「……ぎゃっ!? いたっ!」
ドタバタドスンッ!
びっくりして飛び起きた挙句ベッドから転げ落ち、背中と頭を強かに打ちながら覚醒する。
あいててて……、と涙目になりながら起き上がると、聖さんが呆れ顔でこちらを見下ろしていた。
「俺は幽霊か何かか?」
「す、すみませ……」
「全く。いい加減慣れてくれ」
ほら、と伸ばされた手に掴まり、ベッドの上によじ登る。聖さんの手が、壁に打ち付けたところを優しく撫でた。
「痣になったりしたら、俺が人事部メンバーからどやされるんだからな。……どこか痛めてはいないか?」
「ご、ごめんなさい。大丈夫です」
「もう一緒に暮らしてひと月が経とうというのに、君はいつまでたっても初心だなあ」
琥珀色の瞳が可笑しそうに細まる。私は居た堪れなくなって、その場に正座しながら俯いた。
年明けに同棲を持ちかけられてから、すぐに家探しを始めた私たち。
とはいっても、聖さんがほとんどの手続きをしてくれて、私はときどき彼からの質問に答えたくらいだ。
そんなこんなで途中色々ありながらも比較的スムーズに事は進み、聖さんの言う通り、共に暮らし始めてからひと月が経つ。
だけど未だに同じベッドで眠り、朝を迎えることに慣れなくて……というか、起きて早々に、目の前にあまりにも美しい顔があることに毎度驚いてしまって、結果打撲を負うのだ。
最初のころ、彼がまだ眠っているのに、隣で大騒ぎして彼を起こす、ということを何度もしてしまったことが申し訳なくて、寝室を分けることも提案したのだけど、それはスッと真顔になった聖さんに拒否されてしまった。