一途な部長は鈍感部下を溺愛中
その時の聖さんが怖くて、以来、同じ提案は一度もしていない。
「さて、俺は朝食を作ってくるから、君はもう少し眠っておいで」
まだ俯いたままの私のおでこに、羽のようなキスが落とされる。
「あ、私が……」
「いいから。君はいつも平日に頑張ってくれてるんだから」
休みの日くらいは甘えなさい。と軽く肩を押されるように押し倒され、そのままブランケットを掛けられる。
すっかり就寝状態に戻った私を満足そうに眺めた聖さんは、鼻歌混じりに寝室を出て行った。
確かに、平日は私が家事をすることが多い。でもそれは、聖さんが私より遥かに忙しいからで……といっても、きっと聖さんは聞いてくれないだろう。
「甘える、かあ……」
聖さんはよく、私に甘えなさいと言う。
私からすれば十分甘えてるつもりなのだけど、聖さんに言わせると全然足りないのだとか。
……今日は頑張って、甘えてみようかな。
愛され上手は甘え上手、って、この前読んだ雑誌にも書いてあったし……。
そうと決まれば、甘えるとは何かから調べねば。
私はごろりと寝返りを打ち、サイドテーブルから自分のスマホを手繰り寄せるのだった。
結論から言うと、甘えるにはボディータッチが第一歩らしい。
一括りにボディータッチと言っても種々様々で、私にもどうにか出来そうなものから、絶対無理! というものまで沢山の意見があった。
別に、私たちの間で著しく触れ合いが不足しているとか、そんなことは全くない。
ただこれも、言いようによっては私が聖さんに甘えていて……恋人の触れ合いを与えてくれるのは、いつだって彼からだ。