一途な部長は鈍感部下を溺愛中


「あ、あのあの、でも明日仕事……!」

「大丈夫、寝不足でも出来るような仕事だけにしてやろう」

「しょ、職権乱用……。そ、それに昨日もシたじゃないですか……っ」


抗議する間も、聖さんの猛攻は止まらない。


雨のように絶え間なく降り注ぐ唇は身体中に。不埒な左手は、ウエストのゴムをカリカリと引っ搔いていた。


「本当は毎日だって抱きたいくらいだよ」

「ま……! む、むり……」

「分かってる。だから週末だけにしてやってるが……今日は、君が悪い」


だからもう、観念しなさい。


甘くささやかれ、手の動きが更に不穏さを増す。


「私は、聖さんの真似をしただけで……!」

「俺の?」


うわー! と混乱しながらそう叫ぶと、聖さんが顔を上げた。動きが止まったことにホッとして、こくこくと何度も頷く。


「い、いつも、甘えなさいって仰ってたので……聖さんの真似をして、ちょっと甘えてみたんです。甘えるにはボディータッチが一番だって、言ってたので……」

「誰が」

「ざ、雑誌が」


じ、と二人見つめ合う。


やがて、聖さんが大きなため息を吐き出した。


「なるほどな……。確かに嬉しかったし、可愛かった。これからもぜひお願いしたいし、もっと全力で甘えてきてくれても構わない。……ただし」


もしかしたらこのまま解放してくれるかも。そう期待を抱いた私を嘲笑うかのように、琥珀の瞳に熱が灯る。


「君は自分の可愛さがどれだけ俺の欲を煽るのか、きちんと学ばないといけないな」


そしてそのまま、懲りずに彼を宥めようとした言葉ごと、唇を飲み込まれて。


翌日、寝不足で辛そうな私と、やけにご機嫌な聖さんを見て、横山くんから同情するような視線を送られるのだった。


END



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