一途な部長は鈍感部下を溺愛中
(部長、遅いな……)
じ、と液晶ばかりを見つめていたから目が疲れて、目頭を揉みながら時計を確認すると、部長が席を立ってからもう一時間半が経過していた。
打ち合わせが長引いているのだろう。それ自体は珍しい事でもないし、あまり来る機会のない場所での会議となれば、尚更なのかもしれない。
喉が渇いたな、と思い、給湯室を少しお借りしよう……と執務室を出る。
凝り固まった首や肩をぐりぐりと解しながら歩いていると、給湯室の中から声が聞こえてきて足を止めた。どうやら先客が居るようだ。
さすがによく知らない支社の給湯室、知らない人が居るところに入る勇気が出ず、かといってまた席に戻ってすぐに席を立つのも気まずい。
どうしよう、出てくるの待つ?でもここで待って、鉢合わせるのもちょっと気まずい……と入口のそばで戸惑っていると、話が盛り上がっているのか、中から一際興奮した声が聞こえてきた。
「え!東雲部長って、あの本社の!?」
キャア、と色めきたつ声に、よく知る名前。思わず、ピタリと動きを止めてしまう。
「そうそう、初めて間近で見たんだけどほんっっと美形だった……」
「えええ、いいなあ〜!」