一途な部長は鈍感部下を溺愛中
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東雲聖(ひじり)は女嫌いである。
それは、彼に近しい者の間では共通の認識だった。
普段は役職持ちとは思えないほど気さくで明るく、笑顔の多い彼が、時折別人のように冷たくなる。だから巷では二重人格だと囁かれているようだが、それは間違いだった。
東雲部長が感情を失くした人形のような表情になるのは、女性の前でだけ。
けれど、そんな顔をさせた女性は漏れなく彼のそばに居られなくなってしまうから、彼が女性に限り「そう」であることを、その女性本人も、周りも、結びつかないのだ。
彼は、私が会社から正社員のお話を受け、人事部に配属されたと同時に人事部長に任命された。
右も左も分からずオドオドしていたであろう私に、東雲部長は「よろしくな。困ったことがあれば何でも相談してくれ」と微笑んでくれたから、最初はホッとしていた。
その時にはまだ人事部に女性も何人か居て、優しげな上司に同性の同僚。初めての事ばかりで不安だけど、どうにかやって行けそうだ──なんて、そう思っていたのだ。
東雲部長の存在が、人事部の女性陣を浮き足立たせて居たことは分かっていた。
私は仕事を覚えるのに精一杯でそれどころでは無かったけど、何せあの美貌に、あの若さだ。周りが放っておくはずがない。