一途な部長は鈍感部下を溺愛中
顔を上げると、今来たらしい横山くんがきょとりとしながらこちらを見ていた。
「あ……お、おはよう」
「おはよ。どしたん、画面凝視しながら固まってたけど。なんか変なメールでも来た?」
そう言って眉を顰めた横山くんに首を振る。
「ううん!ちょっと考え事してて……」
「ふーん。何か困ってるなら相談しなね」
慌てて誤魔化した私に心配気な顔を向けてくれる横山くん。
でも、言えるわけない。
東雲部長が怖いんです──なんて。
◆
「ん……?君、ここの図、間違ってないか?」
ジリジリとした陽射しに焼かれ、通勤するだけでじわりと汗ばむ今日この頃。
報告書を東雲部長に渡した矢先、跳ね上げられた柳眉にサッと血の気が引いた。
急速に渇いた喉から「え……」と細い声が漏れ、蒼い顔で書類を覗き込むと、ここ、と人差し指が書類のある一点を指す。
見れば、確かに挿入する図を間違えていて……というよりは、コピー元の図を差し替え損ねてそのままにしてしまっていたらしい。
「すみません!」
ザアッと更に血の気が引いて足元がふらつきそうになるのをどうにか踏ん張りながら、勢いよく頭を下げる。