一途な部長は鈍感部下を溺愛中
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「いやそれ、完全に相手も瑞稀(みずき)に気があるじゃん」
ぴしゃりと放たれた言葉に、私は蒼い顔で首を振った。
本日晴天、日曜日。とあるビルの一角にあるハワイアンな雰囲気のカフェで、私は中学からの親友である、染谷(そめや)ゆかりと向かい合っていた。
ゆかりは気が強くてサバサバしていて明るい、私とは正反対の女の子。
いつもうじうじしている私の背中を押したり、励ましたりしてくれるのはゆかりで、悩み事があると私は決まってゆかりに聞いてもらっていた。
だから今日も、気づいたばかりの淡く、実ることのない恋心を戸惑いながらもゆかりに打ち明けたくて、休日に呼び出したのだ。
事のあらましを聞いたゆかりの第一声が、冒頭の言葉だ。
綺麗にばっちり引かれたアイラインの瞳は、胡乱げに細められている。
「違うんだよ、部長は女嫌いで……」
「嫌いな女を普通自宅に呼んでまで看病しないでしょ」
「いや、私はまだ嫌われては無いはずだから……!」
でもこれから嫌われるかもしれない危機なのだけど。
「……好きって知られたら、嫌われちゃうかも」
今までの態度から一転して、あの絶対零度の眼差しを今度は私に向けられるかもしれない。