一途な部長は鈍感部下を溺愛中


そんなの、耐えられる気がしない……。

本当に、どうして好きになってしまったんだろう、とため息が漏れる。


「異動はしたくないけど、好きだって気付かれて左遷されるのも辛い……」


そんなことになるくらいなら、適当な理由をつけて異動願いを出したほうが精神衛生上良い。けど、今の部署の居心地が良すぎて、他の部署がどんな雰囲気なのかも全く知らないし……。


うんうん悩んでいると、「ていうかさ」とゆかりが面倒そうに吐き捨てる。


「今聞いただけだと、瑞稀が好きになったその男、とんだ思わせぶり男でいけ好かないんだけど」

「えっ」

「だってそんな勘違いさせるような態度取っておいて、いざ好かれたらそんなつもりじゃなかったって斬り捨てるんでしょ? 私は嫌いだわ」


持ち前の性格通りばっさり言い切ったゆかりに、さすがだ……と思いつつ、でも、ゆかりの言う部長像にはどうしても頷けなくて言い淀む。


私の伝え方が悪かったせいで、そう取られてしまったのかもしれない。

でも実際はそんな人じゃなくて、でもなんて言ったらいいんだろう……。

少なくとも私は、これまで玉砕してきた女の子たちを見て、ここで振るなんて酷い人だ、と部長に対して思ったことは一度も無いのだ。



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