一途な部長は鈍感部下を溺愛中



席に着き、思わず小さく息を吐き出す。

するとディスプレイ越しに横山くんと視線が合い、彼が眉を下げながら「だ、い、じょ、う、ぶ?」と口パクで伝えてきた。


やっぱり、他のメンバーから見ても私の態度は変なんだろうなあ。


そう思いながら私は、心配そうな彼に大丈夫だよと伝えるように微笑んで返した。



……のだけど。


神様仏様横山様、やっぱり私は大丈夫じゃないかもしれないです……!


「……部長? どうしたんすか、立ち止まって」


それから更にしばらく経った八月の終わり。

人事部の定常ミーティングを終え、会議室を出たところで不思議そうにこちらを振り返った横山くんに、私は内心ガッツポーズした。


私の前には少し離れたところに横山くんたち、部長以外の四人。そして何故か私のすぐ隣に、東雲部長が立っている。


私はいつもミーティングで出したお茶を給湯室で片づけてから自席に戻るので、今も空になった紙コップをお盆にのせて皆を見送ろうとしていた。


しかし、会議室を出たところで何故か東雲部長が立ち止まったので、私も戸惑っていたのだ。


横山くんの言葉に同調するようにちらりと隣の部長を見上げる。


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