【短】恋するうさぎとズルいオオカミ。
「もういいわ。とりあえず、こんなもんに金は払えねぇからな。タダにしろよ。無料。わかる?」
……ほら、やっぱり。
"先輩"から聞いてた通りだ。
だいたい、8割は食べてるのに、今さらこんな大きな虫が出てくるなんておかしな話。
「……あの、大変申し訳ありませんが、」
「あぁ?」
「っ、」
なんとかしようと試みても、無駄に圧を放つこの人相手に勇気が出ない。
どうしようかと周りのスタッフに助けを求めようとしたその時、わたしの背中に大きな手が触れた。
「お客様、」
そのハスキートーンが、わたしを落ち着かせてくれる。
あぁ、助かった。
後ろを振り向くまでもない。
先輩が、来てくれた。