【短】恋するうさぎとズルいオオカミ。
「だって宇佐見 希子(うさみ きこ)、略して『うさ子』だろ」
「……先輩だけです、わたしをそう呼ぶの」
抵抗し続けて1年と少し。
今日も、先輩がわたしの名前を呼んでくれることはない。
「気が強いくせにビビりなとことか、餌付けして懐いてくるところとか、うさぎそっくりじゃんか」
「お、オオカミに言われたくないです……!」
「誰がオオカミだ。濁点勝手に抜くな」
わたしの必死の抗議も、到底先輩には通用しない。
大神 理人(おおがみ りひと)先輩。
わたしの"うさぎ"より、理人先輩の方が立派に"オオカミ"だと思う。
ほら、苗字の濁点を取れば、完璧に"オオカミ"だ。