【短】恋するうさぎとズルいオオカミ。
「ん、これでよし」
「あ、りがとうございます……」
前にはシンク、後ろには先輩に挟まれたこの状態。
ち、近い……っ!
不覚にも心臓はドキドキと音を立て始める。
それもそうだ、だってわたしの心臓は正直だもん。
"好きな人"とこんな近距離でいて、ドキドキしない方がおかしい。
「フーッ」
「ひゃあ……っ!?」
耳に、息がかかった。
驚いて思わず振り向くと、文字通り目の前にクスクス笑う先輩の顔がある。
あまりに近すぎて慌てて前を向き直したけど、特に意味はなかった。
「顔も耳も真っ赤じゃん」
「そ、そんなことないですっ!」
「ウソつけ」
先輩がわたしをからかって楽しそうなのはいつものこと。
ほんっと、……ズルい。