もう、離れるな 〜地味子×チャラ男の一途すぎる両片思い〜
ある日、俺はあまりにも耐えきれなくなったので、たった1人にだけ琴莉のことを打ち明けた。

そいつは、俺が通っているスクールで最初に仲良くなった親友。

日本の文化も、アメリカの文化もわかるそいつがいなければ、きっと最後まで俺は独りだっただろう。

だからこそ、恥を晒すことになってもそいつには話したかった。

聞きたかった。

俺は、一体どうすれば良かったのか、を。

俺と琴莉の今までの話を全て聞いてくれたそいつは、まずこう言った。


「お前は、どうしたかったんだ?」


俺は即答した。


「俺が、琴莉を守りたかった」


と。


「じゃあ、成功してるんじゃないのか?」


そう、そいつは言った。


「どうしてそう思うんだ」


俺は、何故かそいつの言葉にイライラした。

俺の話のどこから、そういう答えが出てくるのか、分からなかった。


「そう怒るなよ」

「怒ってない」

「いーや、怒ってるね」


そう言いながら、そいつは俺の額に人差し指をつけた。


「頭の中の誰に、お前は怒っているんだ?」


そいつは、決して笑いもせずに、真顔でそう尋ねてきた。

そいつがそういう言い方をするときは、大体俺を見抜いている時。

そういう不思議な力が、そいつにはあった。


俺は、深呼吸をしてから、考えてみた。


怒っている。

胸がムカムカする。

考えただけでも吐きそうになる。


何故だ。

誰に対して、そんな感情を持っている?


そいつはもう1回言う。


「ナオ。ここはアメリカだぞ」

「だから何だ」

「お前は、縛られなくて良いんだぞ、分かってるよな」

「……分かってる」

「いいや、分かってないね。お前、怖いんだろ?」

「何が」

「自分のせいで、かわいいバードちゃんが泣くのを見るのが」



痛いところをついてくる。


「何度も言うが、ここはアメリカだ。お前とバードちゃんのことは誰も知らないし、そもそもお前なんかに誰も興味は持たないよ。まずはその自意識過剰をどうにかしろよ」

「自意識過剰?」


その言い回しに、俺はまたムカついた。

今度は、真剣に俺の話を聞いてくれているはずのそいつに対して。


「俺のどこが、自意識過剰だって?」


俺が聞くと、そいつは鼻で笑いながらこう言った。


「だってお前、自分さえ我慢すればバードちゃんが幸せになれるとか、本気で思ってたんだろ」

「ああ」


だから耐えたんだ。

会いたくて仕方がない時も、その時さえ耐えれば、また2人で元通りになれると思ったんだ。


「それだよ」

「は?」

「お前、本気で分かってないの?」

「何が……」

「お前がそんなことをうじうじ考えている間、バードちゃんがお前のおかげで幸せになれたと思うのか?」
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