よるの数だけ 守ってもらった



「これホチキスしてって」

「あ、うん」


黒板消しも実験の準備もほとんど任せて…というか何も言わずに素早く勝手にやっていたからやらせただけなんだけど、はやく帰りたいから日誌を書くのは手伝うことにした放課後。

先生からの追加の雑用を持って帰ってきた押しの弱い如月初雪にため息を吐きながらプリントをまとめる。

こんなの上手く言って断ってきてほしい。わたしが日誌を出しに行けばよかった。



斜め前に座っている。
机に向かって丸みを帯びる背中。



頼りなくて、どうでもよくて、弱々しいところも気色悪いところも得意じゃなくて。置いて帰りたいくらいで。だけど。


細いのに背筋が曲がっているからか、出っ張った肩甲骨。そこから、もし、もしバキバキと皮膚を破って羽根が生えてきたら、わたしはもう、きっとぜったいに如月初雪のことを好きになってしまう。

でもこのひとはただの人間。

羽根なんて生えっこないから、わたしはまだ、この気持ちを留めておくことができている。



「…陸上部練習してるね」


話す前に手を動かしてほしい。

白髪から横顔が見えて、またため息を吐きたくなった。


「そりゃ大会近いんだから練習するでしょ」

「鳥羽さんはあとどれくらい休むの?」


オッドアイがこちらを振り向いた。

澄ましたような態度が、やっぱり、気色悪い。


「それ答える理由ある?そんな仲じゃないよね」


急に、なんなの?


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