よるの数だけ 守ってもらった
ムキになったような言いかたになってしまい、恥ずかしくなった。
こんなの軽く、適当に、ミナやみんなにするみたいにはぐらかせばいいのに。
「…たしかに、そんな仲ではないよね。ごめん」
そうやって謝られると余計に気分が悪くなる。
このひとといると、感情が言うことを聞いてくれない気がして居心地も最底辺。
「あのさあ、あんた、べつにすごーく気になって聞いたわけじゃないでしょ」
突っかかってみると、予想外だったのか、慌てた様子で立ち上がった。
「そんなことないよ!」
「あっそう」
「真剣に聞いた!」
あまりにも慌てているから少し笑えたけど、よく考えたらなんでそんなに慌てるんだ。
「可笑しいんじゃないの。べつにこっちはどーだっていーんですけど」
「鳥羽さんは意地が悪いと思う」
「意地以外も良いところなんてないよ」
「そんなことない」
0.7と0.1の隙間で、バグでも生じてるんじゃないの。
わたしとは、他とは,違う瞳。
「あんな光景見といて、よく言えるね」
理由は知らない。
だけどこのひとはいつも、わたしを真っ直ぐに見てくる。
やっぱりものすごく居心地が悪い。
「ねえこっちきて」
そう言いながらわたしも立ち上がり、そっと近づく。
目をつぶると冷たいくちびるが重ねられた。
躊躇いを帯びているのがよーく伝わってくる。
それなのに言われるがまま。
莫迦なひと。