よるの数だけ 守ってもらった
ミナのわがままなんて気にせずじっとしていればいいのに。
「さっきの、なんかウチが悪いみたいじゃんね。もっとさあ、言いかたとかあるじゃん。だから嫌われるんだよ。そらもそう思わない?」
「まあ、ひとりが好きなんだろうし、ちょうどよかったんじゃないかな。それよりミナ、今日なんか化粧薄いね」
「ギャ!そうなのっ。彼氏ん家から来たからさ〜。メイク道具ぜんぜんなくって」
「薄いのもかわいいよ。かわいく描けるかなあ」
「ウチもそらも絵苦手だもんね!」
「ねー」
ひとりで隅っこへ移動した如月初雪を横目に、本当にへんなひとだなって思った。
だって本当はちゃんと喋れるのに。
自分の意見も言うし、人の名前も呼べる。
他人とちがう部分だって個性に、特別にできるはずなのに、如月初雪はそうしない。
たぶん望んでいなくって。
ただ可もなく不可もなく生きてるだけって感じ。
何を楽しいと思って何を悲しいと思うのだろう。
わたしとはどこまでも正反対のものに感情が動くんじゃないかな。
わたしだったら、傷ついてしまう。
だからだれにも言わない。
言えない。